カテゴリー : セレクション
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2014/05/21
セレクション
2013/06/20
チョキン
ミシガンに行く前に、と、ケンブリッジの行きつけのお店でカットをしてもらう。チョキン、チョキン。鏡に映る自分を見ながら、何年か前の日本の床屋さんの話を思い出す。
「毎年、同じ繰り返しだよなあ。」
僕より年上の床屋さんが、ふっと言う。
「オレは別に長生きはしなくていいんだ。」
チョキン、チョキン。
「年とって動けなくなって長生きしてもしょうがない。オレは元気な時に1年だけでいいから、自由にやりたいことをしたいんだ。」
チョキン、チョキン。
僕の中で、はさみの音がこだました。
2011/09/10
君が世界を変えてくれ
テッサロニキの空港。パリ行きのカウンターには進まない長い列。前のむさいフランス人の若者は、いらだって音楽を聞いている。その前の家族連れに遅れてきたおばちゃんが大荷物で合流する。むさ男が手を広げて「まったく」と僕を見るので、顔をしかめて同意する。収まらないむさ男は、おばちゃん一家に抗議する(えらいぞ、こんなやつもいるんだ)が、待ってだんだからと、いなされる。気の毒なので、「どうせ、みんな同じ時間にパリに着くんだから。でも何で高いお金を払って並んで待たなくちゃいけないんだか」と言う。「もう、何てめちゃくちゃな世界なんだ」と嘆くむさ男に言う、「君が世界を変えてくれ。若いんだから。」「・・サンキュー。あなたに会えてよかった」、むさ男がサングラスを外してきれいな目で微笑む。こっちもホロッときました。
テッサロニキの公園の猫(野良で細い)とギロ(ハンバーガーみたいなもの)の写真。パリから戻ります。
2011/06/28
気構え
日曜のオープンキャンパスでの高校生さんの質問。英語ができるためには留学しなくてはダメですか?
僕が思う答えは、しなくてもできるようになれるけど、この交通や情報の発達した現代で行かない手はない、ということ。だって言葉や文化を習うんだもの。飛行機に乗れば、半日で着くんだもの。僕もそんな気持ちで海外の学会発表を続けています。
以前にも書いたけれど、テレビで水墨画入門の講師のおじいさんが、最終回に、「これからさらに上達するには?」と尋ねられた時の答え。「良いものを見るためには千里の道もいとわない。そういう気構えが大切です。」その時のすっと眼差しを上げた青年のような表情が忘れられません。
2008/04/07
寺崎くん
今日は近所の小学校の入学式。初々しい1年生を見ながら、自分のを思い出します。式の後、クラスに分かれて入った教室。担任の先生が初めて名前を呼ぶ出席。あいうえお順とわかったので、「と」が近づくのをドキドキして待っていました。「つちや・・さん。」「はいっ。」お、そろそろだぞ。「てらさきひさおくん」あれ、なんか僕と似てるけど違うな。先生、「あれ、欠席かしら、最初なのに。じゃあ次、なかむら・・くん。」あれっ、僕の名前が呼ばれない・・「わたなべ・・さん、で全員ね。」と先生。
僕はもう泣きべそをかいて先生の所に行きました。僕の名前が呼ばれないです。「あ、ごめん。縦書きだったから日へんを隣の字と間違えちゃった。寺崎くんじゃなくて、時崎くんなのね。」うぇーん。
こうして小学校入学の日にもう泣いて、つまづいたわけですが、あの時のさみしかった気持ちも教室の情景とともに忘れられません。笑い話ですけど。
2007/03/24
不合格発表から
去年も「不合格発表」というタイトルで書きましたが、高校3年で受験した大学は不合格でした。切ない思い出から30年近くが経ち、昨日その大学から博士の学位をいただきました。縁を感じずにはいられません。「人生は長いんだから」という言葉を信じるべきなんですね。
大学も大学院も卒業式に前夜の飲み過ぎで出なかった僕ですが、今回の授与式は出席しました。修士の20代の若者たちにまじって自分の式に出るのは、不思議な気持ちでした。でも学長の式辞で、物理学の朝永振一郎・湯川秀樹さんの話を聞けたのは幸運でした。「科学者は現在を過去として見る必要がある」という言葉は心に残りました。
2006/03/10
不合格発表
合格発表の季節です。28年前の今頃、僕は掲示板の前でうなだれていました。雨にぬれて入ったラーメン屋の寒さ、気をつけて帰ってきなよという母の電話の声を今も覚えています。それから長い時が経ち、今度その大学で講演をさせていただくことになりました。リベンジとかそんなものではなく、ただあのときの僕に、タイムマシンに乗って、そういうこともあるんだよって伝えてあげたい気持ちです。もし何かで肩を落とされている方がいたら、と思って書きました。
このブログも、何年も続けてきたので、自分で気に入っている記事を、セレクションというカテゴリーにも入れてみようかと思います。思い出しながら、なので少しずつの追加になると思います。よろしければ、お読み下さい。