2006/04/22

アルジャーノン

ポスト @ 21:50:56 | 講義

 自分の書いた好きな文章で、学生さん向け推薦図書のものを思い出しました。ダニエル・キイスの『アルジャーノンに花束を』です。今は文庫本になっています。
http://library.sapporo-u.ac.jp/SapUlibHP/xolm/XOLM54.HTM
 授業でも何年か続けて中編版を読みました。今でも Then she got something in her eye and she had to run out to the ladys room. は、訳本の「するとキニアン先生の目の中になにかたまってきて洗面所へ走っていかなければならなかった。」ではなく、「キニアン先生は目に何か入って」だと思っています。キニアン先生は、ばかにされているのに「みんないい人だ」というチャーリーの言葉に泣いたのを「目にゴミが入っちゃった」I got something in my eye. と言ってごまかしたのです。eyesでなくeyeと単数形なので片目です。チャーリーだって目にたまるのが涙だということくらい知っているはずで、自分で見て「なにかたまって」というのは不自然です。でもキニアン先生がなにげない自分の言葉に涙をあふれさせるとは思いつきません。だからこそ読んで泣けるところなので訳者と出版社の方に考えていただきたいです。